NPO法人不動産トラブル解決センター 相談員 田中です。
「利回り5%の好物件です」——不動産投資の営業で、こうした説明を受けたことはありませんか?
しかし、その「5%」は本当にあなたの手元に残る利益を表しているのでしょうか。
当センターに寄せられる相談の中で非常に多いのが、「営業資料の利回りと実際の収益が全然違う」というケースです。営業マンが提示する利回りの多くは「表面利回り」であり、実際に手元に残る利益を示す「実質利回り」とは大きな差があります。
この記事では、ワンルームマンション投資における表面利回りと実質利回りの違いを、具体的な数字を使ってわかりやすく解説します。「思っていたより儲からない」と後悔する前に、必ずこの計算方法を理解してください。
この記事でわかること
- 表面利回りと実質利回りの違い
- 実質利回りの計算方法と具体例3パターン
- 営業マンが教えてくれない「差し引くべき経費」の全リスト
- 利回りの目安|何%なら投資として成り立つのか
- 利回りだけで判断してはいけない理由
- 営業資料のシミュレーションを見抜くチェックポイント
表面利回りとは?
表面利回り(グロス利回り)は、最もシンプルな利回りの計算方法です。
表面利回り = 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
計算例:
- 物件価格:2,500万円
- 月額家賃:8万円(年間96万円)
- 表面利回り:96万円 ÷ 2,500万円 × 100 = 3.84%
営業資料やポータルサイトに掲載されている利回りのほとんどは、この表面利回りです。計算がシンプルでわかりやすいため広く使われていますが、実際の収益力を正確には表していません。
なぜなら、不動産投資には家賃収入以外にさまざまな経費がかかるからです。表面利回りはこれらの経費を一切考慮していません。
実質利回りとは?
実質利回り(ネット利回り)は、年間の経費を差し引いた「手元に残る利益」をベースに計算する利回りです。
実質利回り =(年間家賃収入 − 年間経費)÷ 物件価格 × 100
これが投資判断において本当に重要な数字です。表面利回りが5%でも、経費を差し引くと実質利回りが2%を切ることも珍しくありません。
差し引くべき経費の全リスト
実質利回りを正確に計算するためには、以下の経費をすべて差し引く必要があります。営業マンのシミュレーションでは、これらの一部が意図的に省略されていることがあるため、自分で確認してください。
毎月かかる経費
管理費:マンションの共用部分の維持管理にかかる費用です。ワンルームマンションの場合、月額5,000円〜15,000円程度が一般的です。
修繕積立金:将来の大規模修繕工事に備えて積み立てる費用です。新築時は月額3,000円〜5,000円程度ですが、築年数が経過するにつれて段階的に値上がりし、10年後には月額10,000円〜20,000円になることもあります。この「将来の値上がり」を営業資料に反映していない業者は多いです。
管理委託費:賃貸管理(入居者の募集・契約・クレーム対応など)を管理会社に委託する場合の費用です。家賃の3%〜5%が相場です。月額家賃8万円なら月2,400円〜4,000円程度です。
年1回かかる経費
固定資産税・都市計画税:不動産を所有しているだけで毎年課税されます。ワンルームマンションの場合、年間5万円〜15万円程度が目安です。物件の評価額によって変わるため、購入前に必ず確認してください。
火災保険料・地震保険料:加入は任意ですが、ローンを組む場合は火災保険への加入が金融機関から求められるのが一般的です。年間1万円〜3万円程度です。
不定期に発生する経費
空室期間の損失:入居者が退去してから次の入居者が決まるまでの空室期間は、家賃収入がゼロになります。一般的に年間の空室率5%〜10%を見込んでおくのが現実的です。月額家賃8万円の物件なら、年間4.8万円〜9.6万円の損失に相当します。営業資料では空室率0%で計算されていることが多いため、ここが最も大きなギャップになります。
原状回復費・リフォーム費:入居者が退去した際、次の入居者を迎えるためのクリーニングや修繕にかかる費用です。1回あたり5万円〜20万円程度。入居者の入れ替わり頻度にもよりますが、2〜3年に1回程度は発生すると想定してください。年間で均すと2万円〜7万円程度です。
設備更新費:エアコン、給湯器、キッチン・バスの設備は経年劣化します。エアコン交換で10万円前後、給湯器交換で15万円〜25万円程度が目安です。これらは10〜15年に1回程度発生しますが、計画に入れていないと突発的な出費として資金繰りを圧迫します。
具体例で比較する|表面利回り vs 実質利回り
【ケース1】東京23区・新築ワンルーム
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 物件価格 | 2,500万円 |
| 月額家賃 | 8万円(年間96万円) |
| 管理費 | 月8,000円(年9.6万円) |
| 修繕積立金 | 月5,000円(年6万円) |
| 管理委託費(家賃の5%) | 年4.8万円 |
| 固定資産税・都市計画税 | 年8万円 |
| 火災保険料 | 年1.5万円 |
| 空室損(空室率5%想定) | 年4.8万円 |
| 原状回復費(年均し) | 年3万円 |
| 年間経費合計 | 37.7万円 |
表面利回り:96万円 ÷ 2,500万円 × 100 = 3.84%
実質利回り:(96万円 − 37.7万円)÷ 2,500万円 × 100 = 2.33%
差:1.51ポイント
表面利回り3.84%が実質では2.33%。年間の手残りは約58万円ですが、ここからさらにローン返済が差し引かれます。
【ケース2】東京23区・築15年中古ワンルーム
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 物件価格 | 1,800万円 |
| 月額家賃 | 7万円(年間84万円) |
| 管理費 | 月10,000円(年12万円) |
| 修繕積立金 | 月12,000円(年14.4万円) |
| 管理委託費(家賃の5%) | 年4.2万円 |
| 固定資産税・都市計画税 | 年6万円 |
| 火災保険料 | 年1.5万円 |
| 空室損(空室率8%想定) | 年6.7万円 |
| 原状回復費(年均し) | 年5万円 |
| 年間経費合計 | 49.8万円 |
表面利回り:84万円 ÷ 1,800万円 × 100 = 4.67%
実質利回り:(84万円 − 49.8万円)÷ 1,800万円 × 100 = 1.90%
差:2.77ポイント
築年数が古い物件は管理費・修繕積立金が高く、空室率も上がるため、表面利回りと実質利回りの差がさらに大きくなります。表面では4.67%でも実質は1.90%。ローン金利が2%であれば、ローン返済後のキャッシュフローはマイナスになります。
【ケース3】地方都市・築20年中古ワンルーム
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 物件価格 | 800万円 |
| 月額家賃 | 4万円(年間48万円) |
| 管理費 | 月8,000円(年9.6万円) |
| 修繕積立金 | 月15,000円(年18万円) |
| 管理委託費(家賃の5%) | 年2.4万円 |
| 固定資産税・都市計画税 | 年4万円 |
| 火災保険料 | 年1万円 |
| 空室損(空室率15%想定) | 年7.2万円 |
| 原状回復費(年均し) | 年5万円 |
| 年間経費合計 | 47.2万円 |
表面利回り:48万円 ÷ 800万円 × 100 = 6.00%
実質利回り:(48万円 − 47.2万円)÷ 800万円 × 100 = 0.10%
差:5.90ポイント
地方の高利回り物件は、表面利回りだけ見ると魅力的ですが、空室率が高く修繕費もかさむため、実質利回りがほぼゼロになるケースがあります。これが「利回りの罠」です。
利回りの目安|何%なら投資として成り立つのか
一般的な目安として、以下のように考えてください。
実質利回り4%以上:投資として健全。ローン返済後もキャッシュフローがプラスになる可能性が高い。
実質利回り2〜4%:ローン金利や返済期間次第ではキャッシュフローがマイナスになるリスクあり。慎重な判断が必要。
実質利回り2%以下:ローンを組んでいる場合、ほぼ確実にキャッシュフローはマイナス。投資として成立しにくい。
ただし、これはあくまで目安です。ローン金利、返済期間、頭金の額、物件の将来的な資産価値なども含めて総合的に判断する必要があります。
利回りだけで判断してはいけない理由
利回りは投資判断の重要な指標ですが、利回りだけで物件の良し悪しを判断するのは危険です。以下の点も必ず考慮してください。
家賃下落リスク
築年数が経過するにつれて家賃は下がる傾向にあります。新築時の家賃が10年後も維持されるとは限りません。営業資料のシミュレーションが「家賃一定」で計算されている場合、将来の利回りは実際にはさらに低くなります。
修繕積立金の増額リスク
修繕積立金は段階的に値上がりするのが一般的です。国土交通省のガイドラインでは、大規模修繕に必要な積立金の目安が示されていますが、新築時の設定が低すぎるマンションも多く、将来の大幅増額リスクがあります。
出口戦略(売却時の価格)
不動産投資の最終的な損益は、「保有期間中のキャッシュフロー+売却時の損益」で決まります。利回りが良くても、売却時に大きく値下がりしていれば、トータルでは損失になります。購入前に「いくらで売れるか」も想定しておくことが重要です。
営業資料のシミュレーションを見抜く5つのチェックポイント
営業マンから提示されるシミュレーションには、楽観的な前提が入っていることが少なくありません。以下の5点を必ず確認してください。
① 空室率は何%で計算されているか?:0%なら非現実的。最低でも5%、中古物件なら8〜10%で再計算してください。
② 修繕積立金の将来の値上がりは考慮されているか?:現在の金額だけで計算されている場合、10年後の実質利回りはさらに低くなります。
③ 管理委託費は含まれているか?:「自主管理すれば不要」と説明される場合もありますが、会社員が副業で自主管理するのは現実的ではありません。
④ 家賃下落は想定されているか?:新築時の家賃が30年間一定というシミュレーションは非現実的です。
⑤ 原状回復費・設備更新費は含まれているか?:これらが一切計上されていないシミュレーションは、現実と大きく乖離します。
これらのチェックポイントを営業マンに質問して、明確な回答が得られない場合は、その業者との取引は慎重に検討してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 表面利回りと実質利回り、どちらを重視すべきですか?
実質利回りです。表面利回りは物件の「ざっくりとした比較」には使えますが、投資判断の根拠にはなりません。必ず実質利回りを自分で計算した上で判断してください。
Q. 実質利回りは自分で計算できますか?
できます。この記事で紹介した計算式と経費リストを使えば、誰でも計算可能です。不明な経費は管理会社や不動産会社に確認してください。計算が不安な場合は、利害関係のない第三者(NPO法人やFPなど)に相談することをお勧めします。
Q. 営業マンから「利回り8%」と言われました。これは高い方ですか?
それが表面利回りか実質利回りかで判断が全く異なります。表面利回り8%の場合、経費を差し引いた実質利回りは3〜5%程度になることが多いです。さらに地方物件の場合は、空室率の高さから実質利回りがさらに下がるリスクがあります。「利回り○%」と言われたら、必ず「表面ですか?実質ですか?」と確認してください。
Q. ローン返済を含めた「手取り」はどう計算しますか?
実質利回りで算出した年間の手残り額から、さらにローンの年間返済額を差し引いた金額が、実際の「手取り(キャッシュフロー)」です。この数字がマイナスであれば、毎月の持ち出し(自己負担)が発生します。投資としてはキャッシュフローがプラスであることが大前提です。
まとめ|利回りの「正しい見方」を知ることが身を守る
ワンルームマンション投資における利回りは、「表面」と「実質」で全く別の数字になります。
営業資料の利回りだけで投資判断をすると、「聞いていた話と違う」「毎月赤字が出る」という事態に陥ります。この記事で紹介した計算方法と経費リストを使って、必ず自分で実質利回りを計算してください。
「計算してみたら想像以上に利回りが低かった」「営業マンのシミュレーションに疑問がある」という方は、利害関係のない第三者に相談することをお勧めします。
NPO法人不動産トラブル解決センター
- TEL:03-6823-4781(受付時間 10:00〜19:00 年中無休)
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この記事の内容は2026年3月時点の情報に基づいています。物件の経費は個別の条件により異なるため、具体的な投資判断は専門家にご相談ください。
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